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『マスタード・チョコレート』冬川智子

コミュ症が成長して他人と関わるようになってく話は泣ける。

 

マスタード・チョコレート

マスタード・チョコレート

 

 

あらすじ

他人と関わることが苦手で早く美大に行きたいと思っている女子高生の主人公が、予備校の友人や教師との交流を通じて少しずつ変わっていく話。

 

感想

以前読んだ同じ作者の『あんずのど飴』がおもしろかったので買ったが、負けず劣らずおもしろかった。『あんずのど飴』の方は友人との心の距離が離れていく過程を描いた作品で、読後感が少しやるせなかったが、本作は他人との距離が近づいていく話でハッピーよりなのでより万人受けしそうだ。

 

脱コミュ症を扱った作品ですぐ思い浮かぶのは『オナニーマスター黒沢』だが、本作は『オナマス』と比較すると構造上の違いがあった。

『オナマス』の方は脱コミュ症の瞬間を、自身の今までの行為を告白するという目に見える形で描写しており、わかりやすくカタルシスが得られた。

一方、本作では、脱コミュ症は『オナマス』でのような瞬間的な変化としては描かれていない。共通の趣味を持った友人との会話や、教師のやさしさに触れる経験を経て、本当に少しずつ変わっていく。

実際の人の変化は緩慢で目に見えないことの方が多いと思うので、そういう意味では『オナマス』よりも現実にありそうな描かれ方がされている。(ちなみに私は思い出補正もあり『オナマス』の方が好きだ。)

 

作品の終盤で、主人公が受験生だったころを振り返って、自分がいかに変わったかを思うシーンがあって、そこが本当に好きだ。

 

2作品読んで、冬川智子は他人との距離感を描くのがすごくうまいと思った。これからも読みたい。

 

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