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『スローターハウス5』ジョージ・ロイ・ヒル(原作:カート・ヴォネガット)

カード・ヴォネガット原作の小説の映画版。

前から見たいと思っていたがDVDで安いのが出ていたので買って見た(パッケージの背表紙部分に「続・死ぬまでにこれは観ろ!」と書いてあってダサい)。

 

 

あらすじ

宇宙人にさらわれて時間の流れから解き放たれた主人公の一生が、過去の二次大戦でのドレスデン空爆の経験を中心に、ばらばらの時間軸で語られていく話。

 

感想

結論としては死ぬまでに見なくてもいいなと思った。

とはいってもおもしろくなかったわけではなくて、ふつうにおもしろいのだが、やっぱり小説が好きなので、なかなかどうも小説との違いばかり目についてしまって、うまく作品に入っていけなかった。

あとは、昔の映画のためSF的な表現がチープで、そこでもうまく入り込めなかった。

 

では小説の方を死ぬまでに読めばいいのかと言われると難しい。好きな人は好きな作品だと思うが、多くの人はそうではないと思うからだ。

 

悲しみは時間が可逆的に流れるからこそ生じるものだと思っているが、本作の主人公は、宇宙人にさらわれたことによって可逆的な時間の流れから解き放たれてしまっていて、そのためにあらゆる悲しい出来事に対して普通の人間のように悲しむことができなくなってしまっている(例えば、原作では、人が死ぬ場面が描かれるたびに、「そういうものだ」という文が挟まれる)。

人として生きることをやめて人生を眺めているような深い諦念が本作には漂っていて、そういうのが好きな人にはかけがえのない作品になると思う。

 

原作と映画の比較

本作を映画で見るデメリットは、小説の文体の妙を楽しむことができないところだ。小説では、上で書いたような「そういうものだ」や、「聞きたまえ、ビリーピルグリムは時間のなかに解き放たれた」など、印象的な文章がいっぱい出てきて、それらを味わうことができないのは残念だ。

 

逆によかったところは、音楽が美しかったところだ。ところどころ挿入されるグレン・グールドのピアノが場面にもあっててよかった。

 

あと、映画と小説で違うなと思って印象的だったのは、映画ではドレスデンでドイツの少年兵に焦点を当てて描かれていたところだ。

少年兵が女の子の前でかっこつける様子と、空爆の後の変わり果てたドレスデンの風景に絶望して走って行ってしまう様子との対比で、空爆の悲惨さがよりわかりやすく表現されていた。

 

でもなんだかんだ言って、好きな作品をビジュアルで補完できたので、そういう意味で見てよかった。スローターハウスの汚さや、空爆後のドレスデンの悲惨さは印象に残るものだった。