スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険 模造クリスタル

スペクトラルウィザードの続編があるとはまさか思っていなかったのでほんとにうれしかった。前作はここ最近で一番好きなマンガだった。今作は前作よりももっとエンタメ感が強いように思ったが、心にささる心情描写もあって前作に負けず劣らずよかった。

 

今作はクリスタルウィザードの行動を中心に騎士団の謎にせまっていくミステリー仕立てになってて、ストーリーで先を読ませる作品になってた。作者の作品はこれまではキャラクターの心情描写が中心でストーリーはそこまでメインな感じではない印象だったので意外だった。前作(無印)の最終話もストーリーメインだったので、それのテイストに近いと思う。

 

前作では輝かしい過去と現在を対比し、そこから生じる憧憬や後悔などの後ろ向きな感情が中心に置かれていたが、今作はサブキャラのミサキちゃんのスペクトラに対するかかわり方を通じて、人とのかかわり方がメインのテーマの1つになっていたと思う。

 

主人公のスペクトラは魔女、ミサキちゃんは魔女を取り締まる騎士団の一員で、立場上は対立関係にあるが、スペクトラがあまり敵対的でなくピンチのときにはスペクトラの支援を仰ぐなどふわっとした友好的な関係を築いていた。しかし、ミサキちゃんのスペクトラに対するかかわり方は「魔女を取り締まる」という目標に向かうためのもので、いうならば目標達成の道具としてスペクトラをいいように利用していた面があった。騎士団という警察組織の価値観、すなわち正義感に忠実なことが風紀委員長みたいなミサキちゃんを形成していた。

一方で、そのような道具のように扱う中でもミサキちゃんのスペクトラに対する感情ははぐくまれていた。スペクトラと対立したときに、これまで意識していなかった自分のスペクトラに対する感情と、自分の中心であった正義感が緊張関係になり、そこからの展開でやばいカタルシスを生み出していた。

 

この作者はスペクトラルウィザードシリーズでキャラクターデザインとカタルシスの作り方がすごくうまくなっているように思う。今作もぽけーっと読み進めていたら最後にそんなところに盛り上がりをもってくるのか、とびびってしまった。キャラデザも絶妙なデフォルメで、出てくるキャラクター全員がむちゃくちゃかわいくてページをめくってるだけで幸せになる。