辞典という題名がついているものの、掲載されている幻獣は西洋系が中心だった。言語的な問題から仕方ないのか、日本の妖怪系はまったく収録されていなかった(ぬりかべとか)。収録の基準もあいまいで、カフカやC・S・ルイスの想像した動物は細かく収録されていたが、これらを収録するならポケモンも全部載せてほしい。一方で、ラミアやセイレーンなどの、ウィッチャー3に登場したモンスターの背景を知ることができたのはよかった。
子供のころは図鑑が好きで、よくおじいちゃんに買ってもらった動物図鑑や魚図鑑を眺めていた気がする。それにオカルト系の本も好きだった(吸血鬼の家族の絵本とか学校の七不思議系とか)ので、子供のころから趣味が変わっていないなと思う。
出展はプリニウスの博物誌からが多くて興味を持ったが、幻獣だけでなく世界のすべてについて記述した百科事典的な本で、元は37巻もあるみたいだ。Wikipediaによると、ルネサンス期の15世紀に活版印刷で刊行されて以降、ヨーロッパの知識人に愛読されてきたらしい。幻想文学にも影響を与えたと書いてある。日本語版だと全5巻ぐらいで出版されているようなので、買ってみてもいいかもしれない。ほかに引用元として多かったのはフローベールで、ボヴァリー夫人でしか知らなかったが、意外にも聖アントワーヌと誘惑という幻獣がたくさん出てくる本を書いていたようだ。岩波文庫から出版されている。歴史を書いているはずのヘロドトスが引用されている箇所も多かった。あとはやはりギリシャ神話を出自に持つ怪物が多かったように思う。
おもしろかったが、網羅的でない点で不満もあり、もっと本格的な図鑑があればいいのにと思ってしまう。ほかにないか探してみよう。
- 作者: ホルヘ・ルイスボルヘス,Jorge Luis Borges,柳瀬尚紀
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/05/08
- メディア: 文庫
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