ダンジョン飯 6巻 シェイプシフター考察

自分と同じ考察が見当たらなかったので書いた。表で色を付けているところが考察で、ほかは消去法で埋めた。

 

1.ライオスのシェイプシフター

f:id:meganeza:20180623213600j:plainみんなのライオス像がむちゃくちゃすぎて笑える。

 

 

2.チルチャックのシェイプシフター

f:id:meganeza:20180623213607j:plainセンシはチルチャックのことを子どもだと思っているし、マルシルもチルチャックを子ども扱いしているので、どっちのシェイプシフターもかわいい感じになっている。

 

3.センシのシェイプシフター

f:id:meganeza:20180623213613j:plainマルシルも料理は手伝っていた気がするので、なぜフライパンが適当だったのかわからない。

 

4.マルシルのシェイプシフター

f:id:meganeza:20180623213618j:plain

魔術書が適当なシェイプシフターは、「髪は魔術師の命なのに」と発言しているが(p.113 6巻)、センシも2巻で湖を渡るときにマルシルが髪は大事と言っているのを聞いてる。

 

黒魔術のシェイプシフターは、センシもチルチャックも魔術に対しては好感を持っていない気がするので、どちらのものか決めかねたが、チルチャックの方にはエルフと黒魔術に対してステレオタイプなイメージで発言している描写がある。

上の髪に関する発言の考察と合わせて、黒魔術のシェイプシフターをチルチャック、魔法書が適当なシェイプシフターをセンシのものと考えた。

 

髪を下ろしているシェイプシフターは、ファリンを黒魔術で生き返らせたときのマルシルだと思う。目の周りが涙で腫れているっぽい描写があるし、髪もほどいている。発言もシリアスだ。

禁忌を冒してもファリンを助けてくれたところがライオスの印象に残ったのかなと思って、なんかよかった 。

  

 

ダンジョン飯 6巻 (ハルタコミックス)

ダンジョン飯 6巻 (ハルタコミックス)

 

 

『山賊ダイアリー』岡本健太郎

ダンジョン飯から飯マンガをあさってて見つけた。

山賊ダイアリー(1) (イブニングコミックス)

山賊ダイアリー(1) (イブニングコミックス)

 

 

1.あらすじ

作者が猟師で、猟の様子や獲った動物を食べた体験をマンガにしてある。猟の細かい情報(どれが狩猟鳥獣かとか、道路から銃を撃ってはいけないとか)や、カラス等ジビエ飯の味とかが書いてあって、知的好奇心が満たされる。

 

2.感想

ダンジョン飯を読んでから飯マンガおもしろいなと思い、いろいろ読んでみた(極道めしきのう何食べた?等)のだが、なにか物足りない感じがあった。

 

それはサバイバル感だった。

小学生のころ、十五少年漂流記とか神秘の島とかのサバイバルものにはまった時期があって、「ウミガメのスープとか食うのかよ~、きもいけどちょっと食べてみたいな」とか思いながら読んでいた。

 

山賊ダイアリーはそんな自分がまさに読みたかった飯マンガで、ダンジョン飯以降の飢えていた自分のサバイバル飯マンガ欲を満たしてくれた。

 

猟師のコミュニティーの話も秀逸で、作者と一緒に狩りに行く友人が、作者の奇行(ヌートリアを食べたり等)に引く様子がおもしろかった。

 

ただ、ダンジョン飯よりも飯がまずそうで、それは残念だった。

 

 

『三好さんとこの日曜日』三好銀

よかった感覚だけ残っててまったく言語化できない

 

三好さんとこの日曜日 (Spirits neko comics)

三好さんとこの日曜日 (Spirits neko comics)

 

 

あらすじ

夫婦と猫一匹の何気ない日曜日を描いた連作短編集。

 

感想

小唄の発表会を聞きに行くと約束してしまったので出かけようとするが、直前になって女の方がふとんに入って「やっぱり行きたくない」等、よくありそうな夫婦の掛け合いに猫が絡んで、小気味よく話が続いていく。

 

その間に、ノスタルジックな話が挟まる。天井から前の住人のオルゴールが見つかる話とか、一年前に何か言いかけた言葉を思い出そうとして一年前と同じように過ごしてみる話とか、空いてるアパートにこっそりしのびこんで過ごす話とか。

 

くだらなく何気なく生きた日曜日でも一日として同じ日はなくて、その分だけ着実に寿命は短くなって帰れない過去が増えていくんだと思った。

『ローカルワンダーランド』福島聡

福島聡の新しい短編集が(2冊同時に)出た!

 

 

あらすじ

SF風味のいろんな話が入った短編集。SFっぽいことぐらいしかそれぞれの短編に共通項がなくて、全然説明できない。すごい。

 

 

福島聡

福島聡は本当に不思議なマンガ家だと思っていて、この人のような作品を描く人をほかに思いつかないんだけど、でも何が他と違うんだと言われると全然うまく説明できない。本当に不思議だ。

 

無理やり福島聡のマンガの特徴をあげるとすると以下のような点があると思う。

 

・人物の外見描写は写実的だが、内面描写はキャラクター的であること

絵は写実的ですごくうまい(女の子もかわいい)一方で、内面描写についてはすごくマンガ的で極端に単純化したキャラクターを描くことが多いように思う(『星屑ニーナ』のニーナなんかがわかりやすくそうで、目の前の楽しいことだけ考えているようなキャラ造形がなされている)。

その外見と内面の描写レベルのギャップがものすごい違和感を生み出してて、登場人物が大体壊れて見える。

作者自身も壊れたキャラクターを描くのが好きなのか得意なのか、作品中によく登場させているように思う。あとは、大人程内面が複雑化していないため、子どもを描くのなんかも得意にしている気がする(『少年少女』という傑作の連作短編がある)。

もし福島聡の絵柄が、手塚治虫みたいな記号的なものであれば、全然なにも感じなかったんじゃないかって思う。

 

・メタ的な話の展開がよく行われること

今までの話は実は幻覚でしたとか、そういうお約束を破る話の展開がよくなされる。特に長編でその傾向が顕著で、確か今まで出てる長編作品のほとんどにその要素が入っているはずだ(『デイドリームビリーバー』と『機動旅団八福神』)。

マンガでP.K.ディックのような現実崩壊感を味わえるので、ディックが好きな人は気に入ると思う。

 

・短いまとまりでの話の展開がうまい一方で、作品全体としてみるとプロットが崩壊気味であること

一つ上の特徴とも関係するが、短い話を描くのはうまくて、ネタの発想も奇想天外だしオチに印象的な絵ももって来たりして、ほんとうにすごい。

一方で長編になると、一つ一つの短編をつなげていくような形で長編を発想していくのか、全体としてみると意味不明な仕上がりになっていることが多い。

短編が長編から独立して存在感を持ってしまっていて、話の本筋とあまり関係ない小話が異常におもしろかったりする(『星屑ニーナ』の4巻のハナミズキの女の子の話がとても好きだ)。

 

 

感想

本当に全部の話の趣向がばらばらで、全然飽きずに読めた。どの話も別の楽しみ方ができる。とにかくおもしろかった。

 

共通項をあげるとすれば、キャラクターっぽさと人間らしさの対比を話づくりの中心においてる作品が多かったように思う。

 

例えば1巻の方に収録されている『3030年東京オリンピック』なんかがそうで、ロボットっぽい女の子が人間らしさを見せるのだが、この話は本当に最高だ。最高最高最高。

 

あとは2巻の方に収録されてる『ストレート・アヘッド』や『もしも○○が××だったら』なんかは、キャラクターっぽい描かれ方をしている登場人物と、比較的深めの内面描写がなされていて人間っぽい登場人物が対比的に描かれている。

 

結論として、福島聡の描くマンガは他の作家で得られない唯一無二の感覚を与えてくれるので、今後も元気にマンガを描いてほしい(ちなみに『少年少女』がいちばんおすすめ)。

 

『マスタード・チョコレート』冬川智子

コミュ症が成長して他人と関わるようになってく話は泣ける。

 

マスタード・チョコレート

マスタード・チョコレート

 

 

あらすじ

他人と関わることが苦手で早く美大に行きたいと思っている女子高生の主人公が、予備校の友人や教師との交流を通じて少しずつ変わっていく話。

 

感想

以前読んだ同じ作者の『あんずのど飴』がおもしろかったので買ったが、負けず劣らずおもしろかった。『あんずのど飴』の方は友人との心の距離が離れていく過程を描いた作品で、読後感が少しやるせなかったが、本作は他人との距離が近づいていく話でハッピーよりなのでより万人受けしそうだ。

 

脱コミュ症を扱った作品ですぐ思い浮かぶのは『オナニーマスター黒沢』だが、本作は『オナマス』と比較すると構造上の違いがあった。

『オナマス』の方は脱コミュ症の瞬間を、自身の今までの行為を告白するという目に見える形で描写しており、わかりやすくカタルシスが得られた。

一方、本作では、脱コミュ症は『オナマス』でのような瞬間的な変化としては描かれていない。共通の趣味を持った友人との会話や、教師のやさしさに触れる経験を経て、本当に少しずつ変わっていく。

実際の人の変化は緩慢で目に見えないことの方が多いと思うので、そういう意味では『オナマス』よりも現実にありそうな描かれ方がされている。(ちなみに私は思い出補正もあり『オナマス』の方が好きだ。)

 

作品の終盤で、主人公が受験生だったころを振り返って、自分がいかに変わったかを思うシーンがあって、そこが本当に好きだ。

 

2作品読んで、冬川智子は他人との距離感を描くのがすごくうまいと思った。これからも読みたい。

 

meganeza.hatenablog.com

『あんずのど飴』冬川智子

仲の良かった友だち同士が、いつの間にか疎遠になっていくのは寂しいことだ。

 

あんずのど飴 (IKKI COMIX)

あんずのど飴 (IKKI COMIX)

 

 

高校に入ってすぐに親友同士だった二人が、恋愛とかなんだかんだを通してだんだん疎遠になっていく様子が描かれている。

 

本当にそれだけの話なのだが、だんだん心が通い合わなくなっていく様子がモノローグ等を使って丁寧に描かれており、心が乱されてしまう。

基本的には主人公の態度には変化はなく、友人側が変わっていってしまう。だんだんと自分から離れていく友人を見ている主人公の視線が悲しい。

 

絵柄は記号っぽく特徴的だ。コマ割りは全編通して1ページに縦長のコマ4つという形式がとられており、こちらもほかのマンガと比べると少々変わっている。

 

特徴的な絵柄等に対して話の題材はごくありふれたものであり、でもそれがおもしろいという不思議なマンガだった。

『辺境で』伊図透


短編集だが同じ登場人物が出てくる話もあり、連作短編のような形になっている。

収録されている話は、美大生の話、小学校の優等生の女の子が不良の男子と高オニをして遊ぶ話、ソ連で鉄道を敷く話など様々で楽しめた。

 

 

「レールの上を歩むこと」と「そこから逸脱すること」

だが話のバリエーションと裏腹に、テーマ性ははっきりしているように思った。

一部そうでない話もあったが、基本的には「レールの上を歩むこと」と「そこから逸脱すること」が対照的に描かれていた。

例えば、美大生の話であれば、周囲のデザイン科の生徒と違い、主人公は慣れない鉄を使って彫刻作品を作っており、周囲から白い眼で見られている。

鉄道を敷く話では、過酷な労働を前にしても帰る場所がなく従事せざるを得ない他の労働者と違い、主人公は使命感を持った人物として描かれている。この話では、大勢にあらがわず、決められた人生を歩んでいくことが、レールで象徴的にあらわされているように思う。

この対比構造が、個々の作品をドラマチックなものにしていると思った。

逸脱することはよいことか

また、作品において、逸脱することは必ずしも好ましいものとしては描かれていないことも印象的だった。

小学生が高オニをする話では、ひとときの逃避行としてかなりきらびやかに描かれている。

一方で美大生の話では、主人公の作品はみなに評価されるわけではない。教員は情熱には同意する一方で、「的外れ」「こんなの評価できない」と言う。

鉄道の話に至ってはどういう結末を迎えるか読んでほしい。

まとめ

総じて、「逸脱」は情熱的できらびやかなものであるが、最終的には「レール」という大きなものに回収されていくことを予感させるような、どこか閉塞的な印象を受けた。

だが、回収され、無駄に終わるからこそ、逸脱することは尊いのだというメッセージも込められているように思った。花は散り際が美しいというように、人が何者かになろうとする情熱は無駄に終わったとしても美しいのであって、それをいつくしむ感傷的な視線が作品を覆っている気がした。

その他

絵は、線が太くコントラストのはっきりしたいわゆるマンガ的な絵ではなく、ハッチングが多用され、グラデーションも細かめにつけられており、温かみを感じる絵だった。

人物の顔の描き方は、似たような作家がいた気がするが思い出せなかったので、誰か教えてほしい。