ロリータ ウラジーミル・ナボコフ

ロリータは確か大学生の時に一度読んでいて、社会人になってからも読まないものの本棚に並べていたが、なぜかもう一度読みたくなった。

 

ロリータは最初読んだときはやたらエロいなとか、衝撃的な場面があったなとかぐらいの印象しか覚えておらず、終盤は早く読み終わりたくてパラパラ急いで読んでしまったのかあまり記憶がなかった。今回は注釈も一つ一つ読みながらゆっくり読んだが、おもしろくてどんどん読み進めてしまい、結構早く読み終わった。

 

今回の読書では、後半でロリータと再会したときに、ハンバートが涙を流しながらロリータに結婚資金を渡す場面が印象に残った。ハンバートは小児性愛者で犯罪者で普段は自分の快楽だけを考えている身勝手な人間で、物語の大半のロリータはその歪んだ視線によってひたすら欲望の対象としてしか映らないが、情事の後などハンバートが冷静になったときに、夢の合間の短い覚醒状態に見た光景のように、傷ついた少女の残像が作品の端々に表れていた。

 

そして私は今ふと思う、私たちの長かった旅行は、美しく、信頼にあふれた、夢見るような広大な国土を曲がりくねった粘液の跡で汚しただけのことで、もうその国土もすでに私たちにとっては、ふりかえってみれば、隅を折った地図や、ぼろぼろになった旅行案内書や、古いタイヤ、そして夜ごとの彼女のすすり泣きを寄せ集めたものにすぎなくなっていたのではないかーー毎晩、毎晩、私が寝たふりをした瞬間の。(p.311

 

ところどころ自分の欲望によってロリータを傷つけていることによるハンバート自身の葛藤も描写されていた。制御できない自分の本能にふりまわされた男が最後に彼女の幸せを願ったところが良かった。

 

ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)